トヨタブランドに未来はない?章男社長の危機感

日本株
豊田章男
数ある工業製品のなかで『愛』がつくのは車だけ。どんなAIが搭載されても、移動手段としてだけではなく、エモーショナルな存在であり続けることにこだわりたい。

 

孫正義
自動車はひとつの部品に過ぎない。むしろプラットフォームのほうがより大きな価値を持つ。

 

現在進行中の第4次産業革命の中核技術は、人工知能、オートメーション化、モバイルインターネットと言われています。スマートフォンが世界に普及したことでモバイルインターネットが広がり、様々な分野で従来の産業構造が変わりつつあります。その中でも代表的なのは自動車業界です。

 

世界的にはライドシェアサービスが台頭しています。

 

日本では第2種免許という規制のせいで馴染みがないかもしれません。この規制は、第2種免許をもっていないと旅客運送のための運転ができないというルールです。普通免許しか持っていない人が、お金を取って一般客を運ぶことは「白タク」と言われる違反行為なのです。日本にはこうしたイノベーションの芽を摘む規制が張り巡らされていますので、世界からどんどん遅れていくわけです。ソフトバンク・孫正義社長は「こんなバカな国が未だにあることが信じられない」とおっしゃてましたが、全く同感です。

 

話を戻しますと、世界的にライドシェアが広がっています。代表的な企業では、アメリカのウーバーやリフト、シンガポールのグラブや中国の滴滴出行、インドのオラなどでしょうか。

 

スマホアプリで車を呼び出すと、だいたい5分以内に指定した場所に迎えにきてもらえます。呼び出すときに、すでに目的地の入力もすませているので、あとは運転手さんに運んでもらうだけです。決済はスマホアプリ経由のクレジットで支払います。

 

クルマは所有から利用の時代へ

こうしたライドシェアサービスが世界では当たり前になっており、自動車を「所有する」時代から「利用する」時代になったと言われています。

 

この変化はトヨタにとっては都合のいい話ではありません。

 

というのは、車を「所有する」時代では、トヨタの車が欲しい、ベンツがいい、というように、自動車メーカーのブランドなどによって消費者は購入する車を決めていました。しかし、車を「利用する」時代では、どの自動車メーカーの車に乗るかではなく、どのライドシェアサービスを使うかに変わります。つまり、ウーバーの車を呼び出すか、リフトの車を呼ぶのか、というようにどのプラットフォームを利用するのかという話になります。

 

こうなると、自動車メーカーは、ライドシェアサービスを提供するプラットフォーマーの単なる下請けに成り下がる可能性があります。となると、プラットフォーマーに採用してもらわないと自動車メーカーは事業が成り立たなくなります。つまり、今まで大手自動車メーカーと下請けの部品メーカーという構図が、今度はそのままプラットフォーマーと自動車メーカーの構図に変わるのです。

 

下請けの部品メーカーにコストカットを要求し、利益を搾り取ってきた自動車メーカーが、今度は未来のプラットフォーマーに利益を搾り取られてしまうかもしれません。

 

トヨタがこうしたクルマの「利用」時代のプラットフォーマーになれればいいのですが、自動運転の研究開発も含めて、お世辞にも先頭を走っているとは言えません。トヨタは米ウーバーに出資したほか、中国の滴滴出行などとも提携し、今年に入ってからもグラブに出資しましたが、出遅れた感は否めません。

 

 

ソフトバンクとの提携

 

出遅れたトヨタに対して、いち早く時代の変化を感知し、動いていたのがソフトバンクの孫正義社長です。ソフトバンクはビジョンファンドを通じて、世界のライドシェア大手に次々と出資していきました。先ほど述べたトヨタが出資・提携した企業の筆頭株主は全てソフトバンクです。

 

こうした時代の変化に対応し、トヨタが生き残るために章男社長が決断したのがソフトバンクとの提携でしょう。日本一の企業であるトヨタが頭を下げてソフトバンクと手を組んだ背景にはこうした事情があります。

 

トヨタにしてみれば、今回の提携は次の時代に生き残るための必要不可欠な一手でした。しかしながらソフトバンクにしてみれば、トヨタはもはや数ある提携先の一つにすぎません。実際にビジョンファンドを通じて米・ゼネラルモーターズなどにも出資していますし、ホンダとも共同研究を進めています。ソフトバンクにとってトヨタはモビリティAI革命に欠かせないピースという訳ではなさそうです。

 

現在ではトヨタ自動車の時価総額が約20兆円、ソフトバンクが約10兆円ですが、ソフトバンクがトヨタの時価総額を上回る日がいつか来るかもしれません。

 

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