投資する際に考えるべきこととして、コモディティ型企業か、消費者独占企業か、というものがあります。
これは投資の神様、ウォーレン・バフェットも採用している考え方です。
たとえば、コカ・コーラなどの飲料は消費者独占企業になります。コカ・コーラとペプシ・コーラが並んでいたときに、消費者は値段を比べて商品を選ぶのではなく、どちらのブランドが好きかで商品を選びます。
新興メーカーがコカ・コーラをマネして同じ味の飲料を発売しても、例え半額でも消費者は本家のコカ・コーラを手に取るでしょう。名も知れない企業の怪しい炭酸飲料なんか買いたくありませんから。
iPhoneはどうでしょうか。これも同様に消費者独占企業です。例え中国メーカーがiPhoneに負けないクオリティのスマホを半額で販売したとしても、iPhoneが好きな消費者は値段を気にせずiPhoneを選びます。
こうした消費者ブランドを扱う企業は消費者のハートを独占しており、ライバル企業を寄せ付けない強みをもっているというわけです。
こうした企業に投資する投資家は安心してその企業の株を保有することができ、大きなリターンも得ることができます。
一方で、コモディティ商品を扱う企業もあります。
例えば航空会社です。
基本的に、飛行機の予約をするときには値段が最重要視されます。消費者は少しでも安い航空券を買おうとします。もちろん人によってJALが好きな人とANAが好きな人がいるでしょうが、同じ路線で値段が数万円も違えば安い方を選ぶに決まっています。
このようなコモディティ商品を扱う会社はライバル企業との価格競争に陥りやすいです。航空会社はひとたび不況になれば経営が傾きます。実際に世界中の航空会社がたびたび破綻してきましたから、航空会社に投資した投資家は痛い目にあってきました。
石油はコモディティ
石油も基本的にコモディティです。どの会社から買っても石油は石油なので、できるだけ安い値段で買いたいというインセンティブが働くからです。
こうしたコモディティは価格競争に陥りやすいため、企業はあまり大きな利益を得ることができません。
しかしながら、伝統的に石油会社のリターンは非常に良かったです。
ペンシルベニア大学のジェレミー・シーゲル教授の調査では、エネルギーセクターはヘルスケア、生活必需品、情報技術に次いで4番目にリターンの良かったセクターでした。ちなみにコモディティの代表格である素材セクターのリターンは最下位でした。
一見矛盾する、コモディティであるはずのエネルギー(石油)セクターのリターンが良かったのには理由があります。
それはOPECです。
OPECは中東の産油国を中心とした組織で、原油の生産量を調整してきました。供給を調整することで、原油価格を意図的に維持してきました。
本来こうした行為はカルテルと呼ばれ、資本主義国ではやってはいけません。カルテルが行われれば適切な価格競争が生まれず、消費者は不利益を被る一方で、企業が莫大な利益をあげることになるからです。
しかし産油国はおかまいなしに自分たちの有利な原油価格に設定し続けました。
こうしたOPECによる原油価格の調整により、エネルギーセクターである石油会社も大きな利益を上げ続けてきたのです。
シェールガス革命
長らく続いたOPECによる石油の支配はアメリカで起こったシェールガス革命で終焉を迎えました。
アメリカでシェールガスを採掘する技術が発明されて以降、エネルギーの需要と供給のバランスが一気に崩れました。
アメリカのシェールガス企業はOPECの意向に関係なくどんどん採掘するので、エネルギーが供給過多になり、石油の値段はどんどん下落しました。
シェールガス革命によってOPECは原油価格の決定力を失ったのです。
こうなると、今までのOPECによるカルテルで守られてきた石油会社の利益の前提が変わってきます。もともと石油というのは教科書的なコモディティ商品です。したがって、OPECのカルテルによって守られてきた既得権益亡き今、今後のエネルギーセクターの株主リターンは良くない可能性が高いというわけです。
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