株式の割安性を測る指標として、配当利回りがあります。
「日産の配当利回りが5%超えた!」
「ブリティッシュアメリカンタバコは配当利回り驚異の8%超え。買いのチャンス!!」
など、配当利回りをもとにして、割安性を判断している方も多いようです。また日本株であれば配当に加えて株主優待を加えた「優待利回り」という考え方もあるようです。
しかし、結論から言えば、たしかに配当利回りはひとつの目安にはなるものの、厳密に割安性を測りたい場合は基本的にPERで見るべきです。
【KO】コカ・コーラで考えてみる
例えば、世界的飲料メーカーであるコカ・コーラを考えてみましょう。
コカ・コーラの現在の配当利回りは3%を超えており、一見割安だと感じます。
特に飲料というのは、景気にあまり左右されない、極めて安定したビジネスです。景気が良くなったからといって人々が飲むコーラの量が2倍に増えたりはしませんし、景気が悪くなったからといって半分になることもありません。安定ビジネスを展開する老舗企業であるコカ・コーラの配当利回りが3%を超えているのはお買い得に思えます。
投資の神様、ウォーレン・バフェットはコカ・コーラへの投資で大きな成功を収めたことはあまりにも有名です。
そんなバフェットがコーラへの最初の投資に踏み切ったのは1988年でした。
当時の株価は調整後で1.3ドル程度でした。配当は0.04ドルですので、配当利回りは3%弱ということになります。
配当利回りだけ見れば、2018年は3%を超えていますので、現在の水準より割高です。これだけ見ると、投資の神様よりも有利な条件で株を購入できる気がしてしまいます。
しかしながら、当時のコーラのEPS(1株あたりの利益)はおよそ0.09ドルほどでした。したがって、PERでみれば約15倍という水準でした。
一方で、現在のコーラのPERは25倍ほどです。
つまりバリュエーションをまとめると、
となります。配当利回りだけに注目するならば、バフェットが購入した水準ですが、PERで見れば当時の方が格段に割安でした。
これが意味するのは、利益のうちどれだけを配当に回すのか、という配当性向が違うということです。
つまり、現在は利益のほとんどを配当に使ってしまう一方で、1988年当時は利益のうち一定程度を配当にまわしつつも、さらなる成長のための設備投資なども積極的に行っていたのです。
バフェットが購入した当時のコーラは高配当でありながら、同時に成長株でした。
実際、バフェットの購入以後、ぐんぐん売上・利益を伸ばしていきました。コカ・コーラは安定的かつ高成長が期待できるとバフェットは見抜き、投資に踏み切ったのです。
一方の近年のコカ・コーラの売上は低迷しています。
成長が頭打ちになり、利益の大部分を配当にまわしている状態です。言い換えれば、利益のほとんどを配当に回しているから配当利回りが高いだけであって、決して利益の面で見れば割安とは言えないのです。
投資家にとって大事なことは、最終的なリターンであり、究極的には利益でしかないわけです。つまり配当だけに着目するのではなく、配当を含めた利益全体に注目しなければなりません。
たとえ、配当利回りであっても、配当性向が高ければ必ずしも割安とは言えないわけです。実際、コカ・コーラの現在のバリュエーションはやや割高だと思っています。
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